心理臨床オフィスポーポのブログ

大阪・上本町のカウンセリング専門機関です。

亡霊は“亡”であり“霊”でなくてはならない――映画『ナイトメア・アリー』に見る心理療法のエッセンス(ネタバレあり)

(画像は20世紀フォックスDVD販売サイトより) 映画『ナイトメア・アリー』を見ました。ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの小説『ナイトメア・アリー 悪夢小路』を原作とし、ギレルモ・デル・トロ監督が映画化した作品です。 *** 主人公はスタン。見世物…

心は分裂しスウィングする――木ノ下歌舞伎『勧進帳』

先日、京都芸術劇場・春秋座で木ノ下歌舞伎『勧進帳』を観てきました。 木ノ下歌舞伎 official website – 京都を拠点に活動する木ノ下歌舞伎のウェブサイト お芝居というか舞台芸術全般に疎いので、楽しめるかどうかと心配しましたが、なんのなんの、とても…

人間でいるのはとても大変――映画『こわれゆく女』と『かぐや姫の物語』

ジョン・カサヴェテス監督の映画『こわれゆく女』を見ました。 www.zaziefilms.com この映画は、ある一人の女性が“こわれゆく”プロセスを描いたものです。ここで「こわれゆく」に“”をつけたのは、誰が彼女がこわれているとみなしたのか、または、何が彼女を…

二重らせんの果てなきダンスーー映画『イニシェリン島の精霊』について(ネタバレあり)

映画『イニシェリン島の精霊』を見ました。まだまだ上映中の地域も多い映画ですから、これから見ようと思っておられる方々、以下、ネタバレ注意です。 www.searchlightpictures.jp *** 映画の舞台であるイニシェリン島は、アイルランドにあるとされていま…

“ない”がある

昨年の9月いっぱいで閉館したテアトル梅田の現在です。 写真がうまくないのですが、空洞になったまま、今もそこにあります。 テアトル梅田の閉館については、以前に『消えるものは消えるのか』という記事を書きましたが、その灯は消えたものの、消えたものと…

命が命を慈しむこと-映画『私は白鳥』について(2022.10.21一部加筆)

一旦書いた文章でしたが、どうしても納得いかない部分があり、以下加筆して公開します。 (怖い話ではありません…。) *** 配信で、映画『私は白鳥』を見ました(トップ画像はHPより引用)。富山に住む澤江さんが、越冬に来る白鳥を追い、撮り、声を交わ…

命が命を慈しむこと-映画『私は白鳥』について

配信で、映画『私は白鳥』を見ました。富山に住む澤江さんが、越冬に来る白鳥を追い、撮り、声を交わし合う姿を4年にわたって取材した映画です。 www.watashi-hakucho.com *** 映画の中心になっているのは、羽の折れた一羽の白鳥と澤江さんとの交歓。ここ…

消えるものは消えるのか

様々な人や物が、急に消えてなくなってしまうことが相次いだ数ヶ月でした。 いくつものそういった体験の中から、ここに書き記しておきたい二つのことを。 *** 精神科医・中井久夫が亡くなりました。8月8日のことです。多方面で活躍した人ですが、この記…

この世はいつもstrange --映画『幸福路のチー』について

「srange」という英単語を習ったのは中学生の頃だったでしょうか。この言葉を知った時、私は大きな安心感に包まれたのを覚えています。海外の人もこういった“なんか変”を感じるのだ、と。 *** 「strange」という単語は、「変」「奇妙な」と訳されることも…

生きることの虚しさと輝き--『mid90s』の繋がれないつながり

見たいと思いながら見逃していた映画『mid90s』を鑑賞しました。俳優のジョナ・ヒルが監督を務めた映画で、スケーター映画として、また90年代のファッションや音楽へのノスタルジーをまとった作品として宣伝されていたものです。 www.youtube.com 私は90年代…

受け継ぐことの難しさと尊さ――『Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―』について

大阪・中之島にあらたに開設された大阪中之島美術館に行ってきました。現在、『Hello!SuperCollection 超コレクション展 ―99のものがたり―』という特別展を開催中です。 nakka-art.jp この展覧会は、開館までに40年をかけて大阪市が収集してきた美術品を総ま…

<私>として生きることの煩悶――カール・テオドア・ドライヤー『裁かるゝジャンヌ』について

少し前のことですが、テアトル梅田のカール・テオドア・ドライヤーセレクションを見に行きました。 www.zaziefilms.com カール・テオドア・ドライヤーはデンマークの映画監督で、20世紀初頭から中後期にかけて活動した人。つまり、無声映画からトーキーへと…

私は共同体にどのように接続されるのか--『この世界の片隅に』について

『この世界の片隅に』という映画があります。大ヒットロングランでしたし、テレビでも放映されましたので、ご存知の方が多いと思います。 konosekai.jp この映画は、いわゆる反戦メッセージを含んだものとして、また“そのわりに説教くさくない”ものとして語…

mobilityの獲得と「私」の自由-須賀敦子『ユルスナールの靴』について

きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。 須賀敦子の著作『ユルスナールの靴』はこのような印象的な文章…

「人の心などわかるはずがない」

思うところあって、河合隼雄『こころの処方箋』(新潮文庫)を読み返していました。 www.shinchosha.co.jp 河合隼雄と言えば日本における臨床心理学の泰斗、臨床実践や大学での指導の一方、旺盛な執筆活動や講演を行って、本邦にカウンセリング(心理療法)…

夢分析について

当オフィスでお引き受けできることの一つとして、「夢分析」というものを挙げています。ここでいう「夢」とは、寝ている間に見る、あの「夢」のことです。 心理療法において夢を取り扱うということについては、馴染みがある方とそうでない方がおられるのでは…

魂を打ち震わせるような表現―映画『寛解の連続』について

これがあったから死の淵からなんとか引き返してこられたと思うような、魂を打ち震わせるような表現に出くわすことがある。これはもちろん万人に共通するものではなく、いつ何と出会うか、それによって自分に何が起こるかは無数の組み合わせがあり、誰にも予…

悲しみを止める

ポーポの近くを歩いていて、思わずこの花の写真を撮りました。一年ぶりの再会です。 *** このホームページの背景画像にも使っているこの花、ポーポの近所の植え込みでよく見かけます。「キンシバイ」という花で、梅雨時期から夏が花の盛りのようです。 花…

カメラロールを眺めてみよう

今は多くの方がスマートフォンを持っています。 スマートフォンが身近になったことで私にも様々な変化が起こりましたが、写真をどんどん撮るようになったというのもその一つです。 スマホを持っていると、歩いていて「あ」と思った時に写真が撮れ、フィルム…

「これはなんだろう?」

上本町近辺の町をよく歩いています。 薄田泣菫の歌碑の写真を撮っていると、その陰から子どもが一人出てきました。首を傾げながら、写真を撮る私と歌碑とを交互に見ます。その子にとっては日常の遊び場、これが被写体として特別な対象になるということが不思…

生きる町

心理臨床オフィスポーポの最寄り駅は、近鉄・大阪上本町駅または大阪メトロ・谷町九丁目駅です。 駅の周りは商業施設や劇場(新歌舞伎座)があってとてもにぎやかですが、5分も歩くと静かな町が広がります。 緑豊かな公園があって、 木には蜂。 神社があっ…