心理臨床オフィスポーポのブログ

大阪・上本町のカウンセリング専門機関です。

命が命を慈しむこと-映画『私は白鳥』について

 配信で、映画『私は白鳥』を見ました。富山に住む澤江さんが、越冬に来る白鳥を追い、撮り、声を交わし合う姿を4年にわたって取材した映画です。

www.watashi-hakucho.com


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 映画の中心になっているのは、羽の折れた一羽の白鳥と澤江さんとの交歓。ここでの「交歓」とは、喜びだけでなく、飛べずに仲間とはぐれる孤独も、それでも飛んで自由を味わおうとする希望も、それがくじける痛みも、個体としての生命の終焉も、何もかもともに味わおうとする、そんな姿です。雪まみれになり、まさに命を削りあってともにいようとする澤江さんですが、どこまでいっても一体にはなれないという哀しさもまた、そこにはあるように思いました。


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 いくつか忘れがたい澤江さんの語りがありました。メモを取ったわけではないので正確ではないのですが、「白鳥が白鳥を世話している」「とにかく命を楽しんでほしい。私も命を楽しむ」。胸が突き上げられるような言葉です。

 ここにあるのは、人間であるとか白鳥であるとかそういった属性を超えた生命賛歌であるように思います。とにかく生命が生命を慈しみ尽くすことー私が考える心理療法にも通ずる真理を見せてもらったような気がしました。